骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは

骨粗鬆症は、骨強度 (骨密度・骨質によって規定される)が低下し、骨折の可能性が増大する疾患です。

骨では、「骨代謝」という健康な状態を維持するために「骨吸収(古い骨を壊す)」と「骨形成(新しい骨を作る)」が絶えず行われていて、そのバランスで骨密度を保っています。
骨代謝には女性ホルモンの「エストロゲン」が関係しているため、女性では、エストロゲンが減少する閉経後に骨粗鬆症になる可能性が高まります。50歳を迎えると、女性は急激に骨折しやすい状態となり、骨粗鬆症の有病率は60歳代女性の約3人に1人、70歳代女性では2人に1人とも言われています。

症状

痛みなどの症状は認めず、自覚症状もない場合が多いです。身長が縮んだり、背中が丸くなる症状も徐々に起こるため、気付かないうちに進行していることが多いです。

検査

①骨密度検査、②血液検査・尿検査で骨代謝マーカー・ビタミンDの測定を行います。

  1. 骨密度検査
    信頼性の高いDXA法を用いた検査が推奨されるため、聖路加国際病院など連携先の病院にご紹介致します。
    DXA(Dual-energy X-ray Absorptiometry:二重エネルギーX 線吸収測定法)では、2種類のX線を異なる部位(多くは腰椎と大腿骨頸部)に照射して、骨密度を測定します。
  2. 骨代謝マーカー・活性型ビタミンDの測定(血液・尿)
    骨代謝マーカーの測定により骨形成と骨破壊のバランスと進行の速さを調べることができ、骨粗鬆症の病態の把握、治療の選択の際に役立ちます。
    ビタミンDには、腸管におけるカルシウムの吸収を促進し、血中カルシウム濃度を維持し、骨のカルシウムを正常に保つ役割があります。日本人の多くは不足しています。

診断

骨密度検査の結果のYAMという若年成人平均値(腰椎では20~44歳、大腿骨近位部では20~29歳)を使用し、以下の場合に診断されます。

原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症に分類されます。
原発性骨粗鬆症は、主に性ホルモン低下と加齢によって骨強度が低下するものです。
閉経により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下すると、骨形成細胞の活動が低下し、骨量が減少します。
続発性骨粗鬆症は、他の疾患や治療によって骨量が低下するものです。原因としては、内分泌性、栄養性、薬物性、不動性、先天性、生活習慣病、その他があります。
糖尿病・慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病では、骨密度低下のみでなく骨質劣化も認め、骨強度低下を引き起こします。続発性骨粗鬆症では、骨粗鬆症の治療とともに、原疾患の治療が重要となります。

  1. 内分泌性:副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、性腺機能不全、成人成長ホルモン分泌不全症など
  2. 栄養性:胃切除後、吸収不良症候群、神経性食思不振症、ビタミンC欠乏症、ビタミンA
  3. 薬物:ステロイド、性ホルモン低下療法治療後、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)抗痙攣薬、ワルファリン、メトトレキサート、ヘパリンなど
  4. 不動性:臥床安静、対麻痺、廃用症候群、骨折後など
  5. 先天性:骨形成不全症、マルファン症候群
  6. その他:糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、アルコール依存症、肝疾患など

危険因子

治療

対象

骨粗鬆症と診断された方は対象です。ほかに骨量減少と判定された方で大腿骨近位部骨折の家族歴を有する方、*FRAX®の10年間の骨折確率が15%以上の方も薬物療法開始が勧められます。
*FRAX(fracture risk assessment tool):WHOが開発した骨折リスク評価ツール

食事療法

バランスのよい食事を心がけましょう。ビタミンDは骨量を保つうえで重要ですが、日本人の多くは不足しています。
カルシウム(サプリメントやカルシウム製剤を使用する場合には注意)、ビタミンD、ビタミンKが多く含まれる食品を摂ることが大切です。
牛乳・乳製品・小魚・緑黄色野菜・大豆製品などカルシウムを多く含む食品、魚類・きのこ類などビタミンDを多く腹部食品、納豆・緑黄色野菜などビタミンKを多く含む食品、肉・魚・卵・豆・牛乳・乳製品などのタンパク質、果物と野菜が推奨されます。
塩分、アルコール過剰摂取、喫煙、リンを多く含む食品(加工食品や一部の清涼飲料水)、カフェインを多く含む食品(コーヒー、紅茶)は骨を弱くしますので、控えましょう。
また、1日に15分程度、日光を浴びることで、体内のビタミンDが活性化して骨を強くします。

運動療法

骨が作られるため、骨に刺激を与えることが大切です。運動により、骨密度上昇、背筋強化、骨折予防が期待されます。特に閉経後の女性は無理のない運動を継続して行いましょう。

薬物療法

低下した骨量を上げるためには、薬物療法の併用が必要になります。
重症度とタイプ、骨量が低下している部位を調べ、適切な薬剤を選択して治療を開始します。

  1. 活性型ビタミンD製剤:アルファカルシドール(アルファロール、ワンアルファ)、エルデカルシトール(エディロール)
    腸管からのカルシウム吸収を助けて骨を強くします。エディロールによる骨密度上昇作用が最も強く、背中や腰などの椎体骨折の予防効果も確かめられています。定期的に血中・尿中カルシウムの測定が必要です。
  2. ビタミンK製剤:メナテトレノン(グラケー)
    骨を形成するタンパク質(オステオカルシン)を促進するといわれています。オステオカルシンの活性化により、骨の強度を保つことができます。また、オステオカルシンは骨吸収を促す破骨細胞の活性を抑制することも知られています。
    ビタミンKは、緑黄色野菜、特に葉物野菜に多く含まれています。ほうれん草、ブロッコリー、レタス、白菜、小松菜、水菜、春菊、セロリなどの葉物野菜に含まれています。
  1. ビスホスホネート製剤:アレンドロン酸(ボナロン、フォサマック)、リセドロン酸(アクトネル、ベネット)、ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン)イバンドロン酸(ボンビバ)、ゾレドロン酸(リクラスト)
    破骨細胞の働きを抑え、骨が壊れるのを防ぎます。アレンドロン酸、リセドロン酸は、椎体骨折だけでなく、大腿骨近位部骨折の予防にも効果が認められています。
    副作用:食道炎 服用の際にコップ一杯の水とともに服用し、飲んでから30分間は横にならないことが大切です。
    顎骨壊死歯科との連携が必要です。
  2. 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):ラロキシフェン(エビスタ)、バゼドキシフェン(ビビアント)
    エストロゲンに似た作用を持ち、骨が壊れるのを防ぎます。閉経後の骨粗鬆症の方に適しています。椎体骨折の予防効果が認められています。
    静脈血栓塞栓症の副作用があり、周術期などは休薬を検討します。
  3. 抗RANKL抗体:デノスマブ(プラリア)
    破骨細胞を作るのに必要なたんぱく質の働きを阻害して、骨が壊れるのを防ぎます。
    強力な骨密度上昇作用を持つため、中等度〜重度の骨粗鬆症の方にも勧められます。
    椎体骨折予防効果のみでなく、大腿骨近位部骨折にも強い予防効果があります。
    半年に1回の注射製剤です。
  4. 抗スクレロスチン抗体製剤:ロモソズマブ(イベニティ)
    骨細胞から分泌される「スクレロスチン」の働きを阻害することで、骨形成を促進し、骨吸収を抑制します。
    骨量増加作用が強く、中等度〜重度の骨粗鬆症の方にも勧められます。
    月1回の注射で12ヶ月間使用します。
  1. PTH製剤:テリパラチド(テリボン、フォルテオ)
    骨を作る「骨芽細胞」に働きかけ、骨を作ります。
    強力な骨密度上昇作用をもち、中等度〜重度の骨粗鬆症の方や骨折直後の方に勧められます。骨折時の疼痛軽減効果もあります。骨吸収抑制薬の前に使用することで骨折予防効果がさらに高まります。
    椎体骨折に対する予防効果が認められています。
    週1回医療機関で注射するタイプと1日1回もしくは週2回自己注射するタイプがあります。使用できる期間は最大で24か月間です。