気管支喘息とは

一般的に「ぜんそく」は「気管支喘息(ぜんそく)」のことをさし、気管支(または気道)の粘膜にアレルギー性の慢性的な炎症が持続し、気管支が敏感(過敏)に反応して気管支が狭くなる病気です。発作時に「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった呼吸音(喘鳴(ぜんめい)といいます)が出て、息苦しさや咳などの症状をおこします。気道が敏感な状態のため、軽い刺激が加わっただけで、喘息発作が誘発されてしまいます。症状は明け方や天候の変化、風邪をひいたときなどに生じやすくなります。

原因

気管支喘息の原因は様々ですが、大きく分けると① 遺伝的因子と② 環境因子の2つに分けられます。

  1. 遺伝的因子
    ご両親が喘息などのアレルギー疾患を有する場合は、発症のリスクが高くなります。
  2. 環境因子
    アレルギーをお持ちの方がなりやすい病気で、アレルギー反応が起こると気道が狭くなり、発作を生じます。ハウスダスト、カビ、ダニ、ペットの毛などが代表的なアレルゲンとして誘因となります。他にも、天候(気圧・温度・湿度)の変化、大気汚染(二酸化硫黄・二酸化窒素・排気ガスやPM2.5)、喫煙(受動喫煙を含みます)、運動(特に寒いとき)、薬剤、肥満、月経、心因性・身体性ストレス、感染症、冷たい空気など様々なことが要因となり、増悪させることがあります。

疫学

気管支喘息は小児・成人ともに罹患し、喘息患者全体の4人に3人は成人喘息と大人に多い病気です。罹患率(りかんりつ)(一定期間にどれだけの疾病者が発生したかを示す指標)は、小児 15%以上、成人 5〜10%と非常に高く、増加傾向です。
小児の約70~90%はアトピー性喘息とされ、アレルギー反応が主な要因とされています。
子どもの頃は男児に多く、多くの方は2~3歳までに発症し、成長にともなって治ることもありますが (自然寛解)、約20~30%の方は成人に移行したり、再発したりします。
大人になってから発症する場合は40歳代の女性に多く、風邪の後の長引く咳や息切れ、喘鳴で発見されることが多いです。

診断

気管支喘息は、気管支の粘膜に慢性的な炎症がおきて気管支が狭くなる病気ですが、気道が多少狭くなっても自覚症状が認めないことも少なくありません。
自覚症状を認める場合は、発作性の息苦しさ・咳・喘鳴といった症状が特徴的です。夜間や早朝に増悪したり、天候の変化があった後に生じやすかったり、アレルギー素因があることも診断の参考になります。しかし、自覚症状や聴診音だけでは十分な評価は困難なため、必要に応じて呼吸機能検査 で気道の空気の流れが悪くなっていないかどうかを調べます。気管支拡張薬を吸った後、その流れが改善した場合は、喘息の可能性が高いです。アレルギー検査は、血液検査で血中の特異的IgE抗体・好酸球数を測定します。原因アレルギーのスクリーニングではView39やMAST法などを用います。
また、喀痰の検査や、吐いた息の中の一酸化窒素濃度などを測定して、気道の炎症がないかどうか調べる場合もあります。
息苦しさや喘鳴をきたす病気は、気管支喘息だけでなく、心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)も同様の症状を呈することがあります。気管支喘息との鑑別を行うため、胸部レントゲン写真撮影などを行うことがあります。

治療

治療の目標は、喘息発作を予防することです。まず、発作の誘因を避けることが重要です。アレルギーの原因が特定できた場合には、その原因を可能な限り避けましょう。抗アレルギー薬を使用することも多く、通年性鼻炎もしくはスギ花粉症がある方は舌下免疫療法も有効的な手段です。
喫煙されている場合は、禁煙に努めましょう。受動喫煙も可能な限り避けることが望まれます。
薬物治療を作用によって分けると、
①炎症を抑えることと②気管支を広げることに分類されます。

  1. アトピー型も非アトピー型も基本は同じで、吸入ステロイド薬による治療が中心になります。吸入ステロイド薬で気管支の慢性炎症を抑え、喘息発作を予防します。
  2. 加えて、気管支拡張剤をつかって狭くなっている気管支を広げて呼吸を楽にします。

発作時と非発作時で分けると、
①非発作時に使用する長期管理薬と②発作時に使用する発作治療薬に分けて使用します。

  1. 長期管理薬:非発作時に使用して発作を予防します。吸入ステロイドを基本に、気管支を広げる長時間作用性β2刺激薬(LABA)・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)といった吸入薬も使用します。ロイコトリエン拮抗薬という飲み薬でアレルギー反応を抑えます。
    • 吸入ステロイド:フルタイド®、パルミコート®、オルベスコ®、アズマネックス®、キュバール®など
    • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA):スピリーバ®
    • 長時間作用性β2刺激薬(LABA):セレベント®、ホクナリンテープ®
    • 吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の合剤:シムビコート®、アドエア®、レルベア®、フルティフォーム®など
    • ロイコトリエン拮抗薬:オノン®、キプレス®、シングレア®など
  2. 発作治療薬:発作が起きてしまったときに使用します。気管支を素早く広げる作用がある短時間作用性β2刺激薬(SABA)を使用します。改善しない場合は、気管支拡張作用や炎症を抑える作用のある点滴を行ったり、ネブライザーによる吸入療法を行います。入院治療が必要となる場合もあります。
    • 短時間作用性β2刺激薬(SABA):メプチンエアー®、サルタノール®、アイロミール®など

※ステロイド吸入薬は、飲み薬と異なり、副作用は少なく、安全性が高いです。

重症の場合は、大きな病院での加療が必要となりますので、連携施設へご紹介致します。