高血圧症について

高血圧の患者さんは非常に多く、日本では4300万人以上と推測されています。ところが、そのうち1400万人は高血圧であることを認識していないと言われています。血圧は年齢が上がるにつれて上がりやすくなり、2016年の調査では40歳代の男性で36%、女性で14%が高血圧であるのに対し、50歳代だと男性で61%、女性で36%、60歳代だと男性で69%、女性で59%の方が高血圧といわれています(平成28年国民健康・栄養調査)。
高血圧による自覚症状はほとんどありません。自覚症状がなくても、血圧を測定してみることが重要です。(日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編):高血圧治療ガイドライン2019. 日本高血圧学会. 2019)
また、高血圧症の5〜10%は二次性高血圧です(詳細は後述)。

高血圧とは

血圧とは、血液が心臓から全身の各器官へ送り出される際に、血流が血管壁を押す圧力のことです。血圧が基準とされる数値よりも慢性的に高い場合に「高血圧症」と診断されます。収縮期血圧(最高血圧:心臓が収縮して血液を送り出し、血管に圧力が最もかかっている状態)と拡張期血圧(最低血圧:心臓が拡張して血液を取り込んでいる状態)があります。
血圧は、興奮・不安・恐怖などの精神状態、運動、体重変化、気温などの環境要因、食事(内容・時間)などに影響されるため、日内でも・季節でも動揺が絶えず生じています。
特に診察室での測定は緊張しやすく、普段の血圧を反映していない可能性もあります。診察室だけで血圧が上がる現象を白衣高血圧と呼びます。そのため、自宅でも血圧を測定することが推奨されています。
診察室で測定した収縮期血圧が140 mmHg以上または拡張期血圧が90 mmHg以上、もしくは家庭で測定した収縮期血圧が135 mmHg以上または拡張期血圧が85 mmHg以上の場合、高血圧症と診断されます。

高血圧症の診断基準

  • 診察室での血圧:収縮期血圧140 mmHg以上、または、拡張期血圧90 mmHg以上
  • 自宅での血圧 :収縮期血圧135 mmHg以上、または、拡張期血圧85 mmHg以上

診察室血圧と家庭血圧

診察室で測定された血圧を診察室血圧と呼び、自宅で測定された血圧を家庭血圧と呼びます。日々の生活の大半の時間は、診察室ではなく自宅で過ごします。そのため、家庭血圧が、より大切な指標となります。血圧が高い方は、できるだけ自宅でも血圧を測定する習慣をつけましょう。血圧手帳やアプリなどに血圧を記録して、診察の時にご持参ください。

理想的な測定時間と測定法

家庭血圧は、朝と夜の1日2回測定することが望まれます。朝は起床後1時間以内が理想的です。朝起きて排尿を済ませ、朝食を食べる前に血圧測定し、夜も寝る前に測定してください (飲酒・入浴・カフェイン摂取直後は避けましょう)。原則2回測定し、その平均値をとります。
家庭血圧を測定する際は、上腕(二の腕)で測定する血圧計を使用することが勧められます。手首で測定するタイプの血圧計もありますが、高い値が出る傾向にあります。測定する際は、座った状態で1-2分程度安静にして、深呼吸後に測定します。一度の測定時に、できれば2回測定し、その平均値をその測定時の血圧とします。

血圧が高くなると・・・
血圧が高い状態が続くと、心臓から体の各器官へと血液が送られる際に血管壁に強い負荷がかかります。そうなると血管はその圧に耐えられるように次第に厚みを帯び、硬くなっていき、血管内部は弱くなるなど、動脈硬化を生じやすくなります。 高血圧を放置すると、血流が悪くなったり、血管が詰まったりします。ひいては虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や心不全などの心臓病、腎臓病(腎硬化症、腎不全)、脳血管障害(脳出血、脳梗塞)などを引き起こし、生命の危機に瀕することも多くなります。このような状況にならないためにも、健診などで血圧の異常を指摘された方は、早めにご相談ください。
また、血圧が非常に高い「高血圧緊急症」の場合は、意識障害、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、けいれん、乏尿、視力の急激な低下などの症状が現れることがあります。この場合、命にかかわる可能性もあるため、早急に医療機関を受診し、脳、眼、腎、心臓などの心血管系臓器に進行性の障害が生じているかどうかの評価をしましょう。

高血圧症の原因(本態性高血圧と二次性高血圧)

高血圧の原因は1.本態性高血圧と2.二次性高血圧の2つに分類されます。
1.本態性高血圧とは「原因が明らかではない高血圧」のことです。高血圧全体の約90%を占め、遺伝や体質・日頃の生活習慣・加齢が関与しているとされます。塩分の摂り過ぎや過食、肥満、運動不足、ストレス、喫煙、お酒の過剰摂取などが関与しています。本態性高血圧では、血の繋がったご家族に高血圧症の方がいることが多いです。また、血圧は20~30代から高くなり、加齢ともに上昇してくることが一般的です。
2.二次性高血圧とは「原因を特定できる高血圧」のことで、高血圧全体の約5〜10%を占めます。原因疾患としては、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、先端巨大症、甲状腺疾患、副甲状腺機能亢進症、腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、レニン産生腫瘍、大動脈縮窄症、頭蓋内圧亢進をきたす病気、肥満、遺伝性、薬剤性(漢方の甘草による偽性アルドステロン症、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ステロイド、抗がん剤など)、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などがあります。
若いにも関わらず重症の高血圧である場合や50歳を過ぎてから高血圧を発症した場合、高血圧緊急症のような急激に血圧が上昇している場合、治療開始後も軽快しない難治性の高血圧などで特に疑います。

二次性高血圧を示唆する所見

レジデントのための内分泌代謝教室 米国専門医に教わる全13章 第■章より
原因疾患 示唆する所見
二次性高血圧一般 重症高血圧、治療抵抗性、急激な発症、若年発症
腎血管性高血圧 降圧剤(レニン-アンジオテンシン系阻害薬)投与後の急激な腎機能悪化、腎サイズの左右差、低カリウム血症、腹部血管雑音
腎実質性高血圧 腎機能低下、蛋白尿、血尿、腎疾患既往
原発性アルドステロン症 低カリウム血症、浮腫、アルカローシス
クッシング症候群 中心性肥満、満月様顔貌、皮膚線条、高血糖、低カリウム血症
褐色細胞腫 発作性・動揺性高血圧、動悸、頭痛、発汗(起立性低血圧)
甲状腺機能低下症 徐脈、浮腫、活動性低下、CK・コレステロール高値
甲状腺機能亢進症 頻脈、発汗、体重減少、コレステロール低値
副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症
先端巨大症 手足腫大、下顎突出、鼻・口唇巨大化、耐糖能異常、睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群 いびき、肥満、昼間の眠気、早朝・夜間高血圧、巨舌、先端巨大症
大動脈縮窄症 上下肢の血圧差、血管雑音

二次性高血圧の診断へのアプローチ

若いにも関わらず重症の高血圧症である場合や高血圧緊急症のような急激に血圧が上昇している場合、治療開始後も軽快しない難治性の高血圧、低カリウム血症合併、偶発的に副腎に腫瘍を認めた場合には、二次性高血圧を疑って検査を行います。
まず血液、尿の検査を行って、二次性高血圧の原因となる疾患が疑われる場合に適切な画像検査をします。画像検査を先に行うと偶発的に認められた腫瘍の割合が増え、局在診断の正確性が低下する可能性があるためです。

二次性高血圧の内分泌的スクリーニング検査(血液・尿)

レジデントのための内分泌代謝教室 米国専門医に教わる全13章 第■章より
血算 白血球分画も含む
生化学 肝酵素、アルブミン、腎機能、電解質、カルシウム、リン、血糖、HbA1c
ホルモン レニン、アルドステロン、ACTH、コルチゾール、DHEA-S、TSH、遊離T4、成長ホルモン、IGF-1、カテコールアミン3分画
尿 クレアチニン、カリウム、カルシウム、メタネフリン、ノルメタネフリン、カテコールアミン3分画

上記以外に、脈波、腹部エコー(腎臓や腎動脈の評価)、睡眠時無呼吸症候群の検査、頭部CT検査を検討します。
脈波は、大動脈縮窄症などを除外する目的で施行することがあります。
腹部エコーは、腎血管性高血圧を除外するために有用な検査です。
頻度の高い睡眠時無呼吸症候群を調べるために、睡眠ポリソムノフラフィーを行うこともあります。
脳の病気を否定する目的で頭部CT検査を行うこともあります。

血圧の目標値

高血圧の状態が放置されると、心臓・腎臓・脳や血管などの機能障害や病気になりやすいことが知られています。これらの病気を予防するために血圧を下げることが推奨されますが、血圧を下げ過ぎることによるデメリットもあります。つまり、適切な血圧は、個々の患者さんによって異なり、血圧の目標値も変える必要があります。
下記の高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)に応じて目標とする血圧(降圧目標)を決めます。降圧目標は、年齢や併存する病気によって決まります。

降圧目標

高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)より
診察室での
血圧
(診察室血圧)
自宅での
血圧
(家庭血圧)
75歳未満の成人
脳血管障害
(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
冠動脈疾患
尿蛋白陽性の慢性腎臓病
糖尿病
抗血栓薬服用中
130/85 mmHg未満 125/75 mmHg未満
75歳以上
脳血管障害
(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞がある、あるいは未評価)
慢性腎臓病(尿蛋白陰性)
140/90 mmHg未満 135/85 mmHg未満

本態性高血圧の治療

本態性高血圧症の治療の基本は、生活習慣の改善(食事療法・運動療法)になります。特に塩分摂取量の見直しが重要で、1日6g未満の塩分摂取を目指します。ラーメンのスープを飲まない、味噌汁は具沢山にして汁の量を減らす、漬物は控える、などが基本的な対策です。塩分を減らすためには、味付けを工夫することも重要です。だしや酢、減塩の醬油を使うことも有効です。またカリウムの成分を多く含む野菜や果物を積極的に摂取し、体内から塩分を排出するようにします。
運動によって血圧を下げる効果が確認されているため、日常生活に取り入れることが大切です。ただし、重症な高血圧患者さんが過度な無酸素運動をすると逆に血圧が上昇することもあるので、注意が必要です。具体的には、息がやや上がる程度の有酸素運動(毎日30分以上、または週180分以上)を定期的に続けるのが良いでしょう。軽いジョギングやサイクリング、水泳なども効果があります。
肥満傾向の方は心臓に負担がかかっているため、減塩に加えてカロリーを制限し、適正体重(BMI 25未満)を目指します。
禁煙も重要です。喫煙を継続すると、血圧が上昇するだけでなく、動脈硬化も加速度的に進行させてしまいます。

生活習慣の修正項目

  • 食塩制限6g/日未満
  • 野菜・果物の積極的摂取
  • 飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控える
  • 多価不飽和脂肪酸、低脂肪乳製品の積極的摂取
  • 適正体重の維持 : BMI 25未満
  • 運動療法 : 軽強度の有酸素運動を毎日30分、または180分/週以上行う
  • 節酒 : エタノールとして男性20〜30 mL/日以下、女性 10〜20 mL/日以下に制限する
  • 禁煙

生活習慣の改善だけでは血圧が降圧目標に達しない場合は、降圧薬による薬物療法も併行します。降圧薬としては、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、利尿薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)、β遮断薬、α遮断薬などがあります。
各薬剤には使用が推奨される病態があります。個々の患者さんの状態に合わせて、適切な薬を選択し、血液検査などで副作用の有無を確認しながら慎重に経過を見る必要があります。
また、2、3種類の薬剤を組み合わせた合剤も使用されており、内服錠数を減らすことが可能になります。

カルシウム拮抗薬

血圧を下げる効果が確実で、安全性も高く、日本で最も多く処方されている降圧薬の一つです。
作用:血圧は心臓や血管が収縮する際に上昇します。カルシウムイオンが血管平滑筋の細胞内に流れ込むと血管の収縮を促します。カルシウム拮抗薬によってそれをブロックすることで血管収縮を防ぎ、血管拡張を促すことにより、血圧を低下させます。
副作用:頭痛、顔のほてり、下半身のむくみ、反射性の頻脈・動悸、便秘など
注意:グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類が、カルシウム拮抗薬の分解を阻害するため、降圧効果を増強します。
主な薬品:ニフェジピン(アダラート®)、アムロジピン(アムロジン®・ノルバスク®)、シルニジピン(アテレック®)、アゼルニジピン(カルブロック®)

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

現在7種類のARBが市販され、カルシウム拮抗薬に次いで使用されている降圧剤です。降圧効果はカルシウム拮抗薬を比較するとやや弱いです。臓器を保護する作用が認められており、心臓、腎臓、脳の臓器合併症や糖尿病などを有する方では第一選択薬として使用されます。
作用:アンジオテンシン変換酵素(ACE)によって「アンジオテンシンⅠ」から作られた「アンジオテンシンⅡ」は血管を収縮させるほかに、腎臓で水分やナトリウムの排出を抑えて血液量を増やす働きがあり、血圧上昇を招きます。ARBは「アンジオテンシンII」が、その受容体と結合して血圧を上昇させる作用を抑えることによって血圧を下げる降圧剤です。
副作用:高カリウム血症、軽い動悸、めまい、血管浮腫
妊娠中は禁忌です。
主な薬品:ロサルタン(ニューロタン®)、カンデサルタン(ブロプレス®)、バルサルタン(ディオバン®)、テルミサルタン(ミカルディス®)、オルメサルタン(オルメテック®)、イルベサルタン(アバプロ®)、アジルサルタン(アジルバ®)

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)

心臓や腎臓の保護に優れるとの証拠がある降圧剤です。ARBとほぼ同等の仕組みで効果を発揮しますが、効果はやや弱いです。
作用:上記の ACEの働きを阻害することによって血管を拡張し、血圧を下げます。
副作用:空咳やのどの違和感、高カリウム血症、血管浮腫
妊娠中は禁忌です。
主な薬品:イミダプリル(タナトリル®)、リシノプリル(ロンゲス®・ゼストリル®)、エナラプリル(レニベース®)、テモカプリル(エースコール®)、デラプリル(アデカット®)、カプトプリル(カプトリル®)

利尿薬

薬の値段が安価のため、海外では一番多く処方されています。利尿薬は特に高齢者、CKD合併高血圧、糖尿病、インスリン抵抗性など食塩感受性が亢進した高血圧、低レニン性高血圧への効果を期待でき、減塩が困難な高血圧やむくみを合併した高血圧に対する降圧剤として有用で、心不全の予防効果にも優れています。一方で糖尿病や痛風を持つ方では病状を悪化させる可能性もあり注意を要します。
作用:腎臓に作用してナトリウムと水分の排泄を促すことにより、血液量を減らして血圧を下げる降圧薬です。古くから治療に使われており、高血圧だけでなく、心不全やむくみなどの症状にも使われています。降圧効果は比較的弱めです。
副作用:脱水・低カリウム血症、耐糖能低下や糖尿病の悪化、高尿酸血症や痛風、高中性脂肪血症など
主な薬品:ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド®)、トリクロロメチアジド(フルイトラン®)、フロセミド(ラシックス®)、アゾセミド(ダイアート®)

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)

臓器保護効果があり、心不全や心筋梗塞後、慢性腎臓病(CKD)にも効果を発揮します。降圧効果は弱めです。
作用:利尿薬の一種でカリウムを低下させることなく腎臓からナトリウムを排泄させる作用があります。副腎で生成されるホルモン「アルドステロン」の作用を遮断し、塩分と水分を尿に排泄させることで、血圧を低下させます。
副作用:女性化乳房やめまい、ふらつきなど
主な薬品:スピロノラクトン(アルダクトン®)、エプレレノン(セララ®)、エサキセレノン(ミネブロ®)

β遮断薬

心拍数が早い、若い人の高血圧に効果的です。頻脈や心不全、狭心症や虚血性心疾患の合併症がある方や心筋梗塞発症後も服用できます。
作用:自律神経に働きかけて血管の収縮を抑えたり、心臓から送り出される心拍出量を減らしたりすることによって血圧を下げる降圧剤です。β遮断薬は、頻脈や心不全、狭心症や虚血性心疾患の合併症がある人や心筋梗塞の発症後も服用できます。降圧効果は中程度です。
副作用:気管支喘息などの閉塞性肺疾患の増悪、脈拍数が少なくなる、手足の冷え、糖や脂質代謝の悪化、抑うつ、不眠、倦怠感
主な薬品:プロプラノロール(インデラル®)、ビソプロロール(メインテート®)、
カルベジロール(アーチスト®);α遮断薬の作用も有する

α遮断薬

強い降圧作用を持ちます。糖・脂質の代謝や前立腺肥大にも良い影響を与えるとされています。
作用:自律神経(交感神経)のα受容体に作用し、血管の収縮を抑えつつ、血管を拡張することによって血管抵抗性を下げ、血圧を下げる降圧剤です。
朝の高血圧に使われることがあります。また妊娠中の患者さまでも使用しやすい薬剤です。
副作用: 起立性低血圧(立ちくらみ)、めまい、動悸、湿疹など
主な薬品:ドキサゾシン(カルデナリン®)

内分泌疾患による高血圧症(二次性高血圧)

高血圧症の原因となる内分泌疾患については、主に以下のようなものがあります。
各疾患をクリックいただくと、詳しい情報をご覧いただけます。

原発性アルドステロン症

副腎皮質からアルドステロンというホルモンが自律的に過剰分泌されることにより高血圧を呈する病気です。アルドステロンの作用により血液中のカリウムが低下することがあります。高血圧症の方で低カリウム血症を認める場合は積極的に疑います。この病気は高血圧全体の約5~10%を占めるとされ、比較的頻度が高い二次性高血圧の原因です。他の高血圧症と比較して動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)のリスクが高いとされています。

クッシング症候群

副腎皮質からコルチゾールというステロイドホルモンが過剰に産生される病気です。この病気は高血圧を呈する以外に血糖値の上昇、体重増加、筋力低下、皮膚の菲薄化、免疫機能の低下、骨粗鬆症、月経異常などを引き起こすことがあります。高血圧に糖尿病や肥満を合併している場合には積極的に疑います。

褐色細胞腫

主に副腎髄質にできた腫瘍からカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が過剰に分泌をされ、高血圧になる病気です。発作性の血圧上昇、頭痛、動悸、頻脈、発汗過多、不安感、便秘など多様な症状が現れます。この病気を放置すると急激に血圧が上昇する高血圧クリーゼや心筋梗塞に似た発作が起こりやすいため、早期発見と早期治療が重要です。

レニン産生腫瘍

腎臓にできた傍糸球体細胞腫や他の部位にできた異所性レニン産生腫瘍からレニンというホルモンが過剰に分泌されることで高血圧になる病気です。稀な疾患です。

その他の内分泌疾患

遺伝子異常が原因の疾患として、家族性アルドステロン症、先天性副腎過形成、Liddle症候群などの内分泌疾患も高血圧の原因になります。

内分泌疾患以外の二次性高血圧の原因として高頻度にみられる睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まると、体内の酸素濃度が低下し苦しくなる影響で、血圧が上昇します。寝ているときにいびきをかく場合や日中にも眠気を感じる場合は積極的に疑います。肥満や降圧薬が効きにくい難治性の高血圧であることも、この病気を疑うきっかけとなります。

二次性高血圧の治療は原因疾患に対する治療(手術や内服加療)ですが、肥満の場合や長期間の高血圧によって動脈硬化や臓器障害が進行している場合は、原因疾患の治療後も高血圧が改善しない場合があります。本態性高血圧の治療と同様に、生活習慣を見直し、減塩につとめ、降圧薬が必要となることもあります。しかしながら、高血圧をもたらすホルモンの作用をブロックすることや生活習慣の見直しは、虚血性心疾患・脳梗塞・腎不全などの発症を予防するのに大変重要です。